年金

国民年金の「任意加入手続き」を区役所でやってみた

任意加入の申請に区役所に行ってみた

国民年金(基礎年金)の「任意加入制度」とは?

皆さん、国民年金の「任意加入制度」ってご存じですか?

国民年金の加入期間は480ヵ月。つまり40年です。

480ヵ月、年金保険料を払い込めば65歳になったときに年金を満額受け取れます。(令和6年度で年額816,000円)

仮に年金保険料を支払っていない時期がある場合は、未納1ヵ月につき1,700円が減額されることになります。

年金保険料には未払い分を後から支払う「追納」という制度がありますが、10年前までしか遡って支払うことができません。私の妻は20歳から23歳まで未納の期間があったため「追納」することができません。

大学生のころ自分に年金保険料の支払い義務があることなど知らずに20歳になって就職して会社員になるまでの間、年金保険料なんて払ってないよ、なんて人は結構多いんじゃないでしょうか?実は私も学生時代の3年間は年金保険料は未納です。

私も妻も今年60歳になりました。私は継続雇用で今までと同じ会社でサラリーマンとして引き続き働いており厚生年金保険料を今も支払っているので、国民年金の保険料も厚生年金保険料の中から支払っていることになります。したがって、会社員でいる限り国民年金(基礎年金)も満額には近づいていきます。もっともこの場合は国民年金(基礎年金)に加算されるのではなく、厚生年金部分に「経過的加算」として国民年金(基礎年金)の増額分が反映されます。

しかし妻は60歳になった時点で「3号保険者」の資格を失い、いまは年金保険には加入していない状況です。先に書いたように未納時期は30年以上前のため、いまさら「追納」をすることもできません。彼女はこのまま減額された国民年金をうけとるしかないのでしょうか?

ひとつ方法があります。それは国民年金への「任意加入」です。

国民年金の加入者の資格は「自営業者・農林漁業者・アルバイト・無職・学生等々」で「20歳以上60歳未満」と定められています。しかし下記の条件を満たす人は、国民年金に希望して加入することができます。これを「任意加入保険者」といいます。

  • 日本国内に住所のある60歳以上65歳未満の人
  • 海外に在住の20歳以上65歳未満の日本人

妻の今年の「ねんきん定期便」によると年金保険の加入期間は449ヵ月となっており、480ヵ月に31ヵ月足りていないことになります。任意加入をして加入期間を480ヵ月にすれば1700円x31=52,700円年金受取額が増えることになります。10年で527,000円、20年で1,054,000円の増額です。結構バカにならない金額です。

任意加入手続きの実際

というわけで9月某日、区役所の年金窓口に任意加入の手続きに出かけました。

なぜ年金事務所ではなく区役所に行ったかと言うと、「予約が不要だった」から。年金事務所より空いているんじゃないか、という思惑もありました。

持参した書類は以下の3つでした。

  • 年金手帳
  • 本人確認のための書類(マイナンバーカード)
  • 年金保険料を支払う銀行口座の通帳と印鑑

加入者本人である妻に私も同行します。

開庁時間とほぼ同時に窓口へ。予想通り相談者はゼロ。すぐに窓口にとおされました。女性の係の方が一人で対応していただきました。

まずは要件を尋ねられたので「国民年金の任意加入手続きをしたい」旨伝えると、まず年金手帳の提示を求められます。妻は2冊の手帳を持っていましたので、二つの年金番号が統合されているか確認します、ということで彼女は衝立の向こうへ。どうやら年金事務所に電話をかけている様子です。

約10分後、彼女が戻ってきました。間違いなく年金記録は統合されているとのこと。「ねんきん定期便」で確認はしてますが、まあひとまず安心です。

続いて、保険料の納め方についての説明です。令和6年の保険料は月16980円。これを毎月払うか、前納するか(6ヵ月前納、1年前納、2年前納の3パターン)を聞かれます。前納すると少し保険料が割引になるので「2年前納」を選択しました。ちなみに「16590円」の割引でした。引き落としのタイミングは10月に2年分が引き落とされて、令和6年9月から残り分が480ヵ月になるまで毎月引き落とされるとのことでした。

合わせて「付加年金」についても説明されました。付加年金は任意での加入ですが月400円を支払うと200円x加入月数が基礎年金に加算されます。つまり2年年金を受け取れば、元がとれる計算です。こちらにも加入しました。

こんな感じで加入手続き自体は30分程度で終了。結局ほかの相談者はだれも現れませんでした。

窓口の方も親切・スムーズな対応で、区役所で手続したのは正解だったなあ、と感じました。

奥様が3号保険者になっているサラリーマンの方々は、奥様が60歳になると3号保険者資格を失うことを忘れずにいたほうがいいと思います。奥様の年金定期便も目を通して、その時がきたら年金を増やせないか、確認しておきましょう。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2023年度の「業務概況書」が発表されました

GPIFの運用実績をはじめとした2023年の「業務概況書」が発表されました。

2023年度の運用収益額はプラス45兆4000億円!

それによると23年度の運用収益はプラス45兆4000億円。収益率は22.67%。超優秀な運用成績ですねぇ。収益の累計はなんと約153兆8000億円に達しています。また、年金積立金全体の実質的な運用利回りは年率4.24%となっており、着実に資産を増やしていっています。

運用資産額は約246兆円!

また運用資産額は2022年度末の約200兆円から2023年度末は約246兆円にまで増加。このお金は将来世代の為に運用されていますので、現在の年金受給額には影響を与えませんが、若い世代の人々の年金制度維持のためには明るい状況になっているといえると思います。

出典:GPIF2023年度業務概況書

運用資産額は2001年度より右肩上がりで増加しています。2020年度にはいわゆる「コロナショック」で10兆円程度、資産を減らしました。この時マスコミはこぞって「年金積立金の運用に失敗」「年金は将来大丈夫なのか?」と不安を煽るような報道をしましたが、2021年度には100兆円程度にまでV字回復。この時はマスコミはなーんにも報道しなかったので、「運用失敗」という印象が一般の方には残ったままになっており、ひいては「年金不安」につながっているのではないか、と思います。

またこの運用実績のグラフは「長期分散投資」の最高のお手本だと思います。いわゆる「暴落相場」で市場全体が急落しても慌てて売りに走ることなく、長い目で市場の回復を信じて投資を淡々と続けることの大切さがよくわかりますね。

相場ですから、将来暴落は必ずおこります。年金積立金も一時的に減少する可能性は十分にあると思いますが、短期的な値動きに一喜一憂するすることなく、市場に居続けることの大事さは、一般投資家もなんら変わるところはありません。

次回はGPIFのポートフォリオや投資銘柄についてお話ししたいと思います

GPIFが年金積立金の運用状況の速報を発表。そもそも「年金積立金」って何?年金の財源ってどうなってるの?

年金積立金額は現在219兆円

8月にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)から年金積立金の2023年度第一四半期(2023年4月~6月)の運用結果を発表しました。それによりますと、この3か月間の収益率は9.49%、収益額が+18兆9,834億円との事。累計の資産額が219兆1,736億円に達していることがわかりました。

運用利率9%越えというのは、なかなかの実績だと思います。累計資産額が219兆円を超えていることも、日本の年金財政にとっては明るい出来事と言えるのではないでしょうか。GPIFの資産運用がうまくいっていると言っていいと考えます。

年金積立金とは?

そもそも、年金積立金とは何なのでしょうか?日本の年金の財源は「年金保険料」「国庫負担(税金)」からなっています。そしてその年に年金として支払われることのなかった「保険料」の余剰金が、将来世代のために「年金積立金」として積み立てられ、運用されているのです。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金積立金の説明
    出典:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)HP

年金積立金の占める割合は年金財源全体の「1割」

日本の年金の財源は国民(被保険者)が支払う「年金保険料」と「国庫負担金(税金)」になります。年金の支払いに充当されなかった「年金保険料」は将来世代のために積み立てられて、運用されています。これが「年金積立金」です。

年金積立金は、物価上昇率や賃金上昇率にも左右されない年金財源の安定化のため、年金財源の1割ほどに充当されています。2020年度の年金給付額は約56兆円になりますので、6兆円弱が年金積立金から使用された計算になります。

長期分散投資のお手本のような運用実績

さて、2001年から2023年までのGPIFの年金積立金の運用実績を見てみましょう

出典:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)HP

2008年から2009年にかけての「リーマンショック」や2020年の「コロナショック」の時にはさすがに資産を減らしてはいますが、そこを過ぎれば長期的に見て右肩上がりのグラフとなっています。まさに長期投資の典型的な成功例であると言えるのではないでしょうか。マスメディアは大きく減ったときには「年金積立金の運用に失敗した。日本の年金は大丈夫なのか」と大騒ぎしましたが、その後著しく回復していることにはほとんど触れていません。こういったニュースしか見聞きしていない人々は年金に対して不安感を持ったとしても当たり前ですよね・・・。

またGPIFのホームページには「基本ポートフォリオの考え方」という項目もあり、2020年度以降現在までは国内株式、外国株式、国内債券、外国債券にそれぞれ25%づつ投資して運用する、としています。完全に1/4づつ4つの資産に分散しているわけで、われわれ個人投資家と同じような考え方で運用を行っています。

ちなみに2019年度までのポートフォリオは国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%だったようです。「年金財政上必要な利回りを満たしつつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定した結果、以下のような基本ポートフォリオとしました(※GPIF HPより引用)」 とのコメントが掲載されていました。

また分散投資については

  • 1位になる資産は当てられない→だから4資産に分散して投資を行う
  • 卵を一つのかごに盛るな→有名なことわざをここでも見る事ができました

といった記載も見つけることができました。

以上のようにGPIFのホームページには個人投資家にとっても非常に参考になる示唆や記事があふれていると感じました。運用方針もまさに「長期分散投資」のお手本を見るようです。

ぜひ投資初心者の方々や投資を始めようと考えている方はGPIFのホームページに一度アクセスしてみては?

60才以降もサラリーマンとして働くと年金はいくら増えるのか?「180万円の法則」でカンタンに分かる!

私事ですが、60才の定年まで1年を切りました。

先日会社の総務部から「あと1年で定年だけど、そのあとどうする?」と継続雇用の意思の確認調査も送られて来ました。

FPとして活動を始める以前は、漠然と「もうサラリーマンはいいや。子供も独立したし、家のローンもないし、アルバイトで週3回くらい働くかんじでいいかなあ」なんて思っていたのですが、FPとして様々なお金に関する知識を得ることが出来ている今は少し考え方が変わっています。

自分自身のライフプランシュミレーションを作成したところ、65歳まで継続雇用で月収20万程度で働くと、66才以降のキャッシュフローがとてもラクになることが分かってきました。

定年後の過ごし方を決めかねている方は、是非FPにご相談されることをお勧めいたします。自分のライフプランが数字で「見える化」されることにより、より前向きに定年後を迎えることが出来ると思いますよ。

定年後の働き方には三つのパターンがある

さて本題に入ります。

定年後の働き方は大きく分けて3パターンです。

一つ目が今働いている会社で引き続き65歳まで雇用してもらう「再雇用」や「継続雇用」と呼ばれる働き方です。

二つ目は今働いている会社は定年で退職し、新たに別会社で働く「再就職」ですね。

三つめは定年後は組織から離れ、自分で個人事業主になったりや法人を設立して働く「起業」があります。

ここでは一番目、二番目の働き方をした場合の年金についてお話をしたいと思います。

年金を増やすには60才以降も「社会保険」に加入することが必須

一番目、二番目の働き方に共通するのは「60才以降も引き続き社会保険料を支払う」というところです。

「国民年金」の加入資格は20才以上60才未満となるため、60才以降も加入することはできません。学生時代に「国民年金保険料を払っていない」という方は大卒で企業に就職したサラリーマンには意外と多いと思います(かくいう私もその一人です)。

国民年金を満額受け取るために必要な「加入期間480か月」に達していない人は「任意加入」という制度があり、60才で会社員を退職すれば65歳までの間に480か月に満たない部分の保険料を納付することが可能で、国民年金の受給額を満額にすることができます。ただし60才以降も社会保険に加入する場合は「任意加入」はできないことになっています。

では「社会保険」は60才以降も加入できるのでしょうか?

答えは「加入できる」です。

社会保険は70歳まで加入することが可能です。保険料を支払えばその分「厚生年金」の受給額は増えていきます。

「いくら年金が増えるのか?」は以下の計算式で算出することができます。

「標準報酬月額(額面月収)」x0.55%x勤務月数=プラスになる年金額(年額)

額面月収が20万円で60才から65才まで勤務した場合「20万x0.55%x60か月=66,000円」となり、年額で66,000円年金が増えることになります。

ただこの「0.55%」ってなかなか覚えにくいですよね?

そこでもっと簡単にいくら年金が増えるのか、把握することができる「法則」があるのです。

年収が180万円増えると1万円年金が増える!?

それが「180万円の法則」です。

180万円年収が増加すると年金は年額1万円増えるのです。

年収が240万円の場合は

(240÷180)× 10000円 ≒ 13,300円 13,300円x5年=66,500円 

と先の「公式」で計算した結果とほぼ同じになります。

「経過的加算」で国民年金の受給額も増える!?

さてここでもうひとつお話しておかなければならないことがあります。

先ほど「国民年金の任意加入」の説明で「60才以降も社会保険に加入する場合は、国民年金の任意加入はできず、国民年金を増やすことはできない」とお話ししました。

実は社会保険は、国民年金保険にあたる「定額部分」と厚生年金保険にあたる「比例報酬部分」から成っており、社会保険料を支払うことで「国民年金」と「厚生年金」を受け取ることができる仕組みになっています。

60才以降も「社会保険料」を支払うという事は「国民年金保険料」も支払っているという事になるのです。

ただし先ほども述べました通り、国民年金に60才以降加入することはできません。

たとえば、22歳〜65歳まで会社員として働いていたとします。国民年金には38年しか加入していないこととなるため、老齢基礎年金(国民年金)は38年分しか計算されません。この場合、60歳〜65歳まで厚生年金保険に加入している期間があるため、「経過的加算」として2年分の老齢基礎年金(国民年金)の金額に相当する額が、厚生年金保険から加算されることになります。あくまで「厚生年金」に加算される、というところがキモです。

ではいくら加算されるのか?ですが、国民年金の受給額の計算式は

定額部分の金額 = 1,621円 (令和4年)× 厚生年金保険加入月数(上限480月)

となります

1621円x480か月=778,080円・・・定額部分

777,800円(令和4年)x(38年x12÷480)=738,910円・・・老齢基礎年金(国民年金)

778,080円-738,910円=39,170円・・・経過的加算

上記計算式により、「経過的加算」として厚生年金に39,170円が加算されます。

先に計算した厚生年金の増加分66,000円と合わせて105,170円が65歳まで社会保険に加入することによって増える年金額という事になります

私はこの計算結果により、「65歳まで今の会社で働こう!」と決意するに至りました(笑)

やっぱり「知る」って大事ですね!

皆さんはどう思われますか?

4月からここが変わった!社会保険制度~その2・老齢基礎年金額の改定(引き上げ)

「4月からここが変わった!」シリーズ・第二弾です。今回は老齢基礎年金の額が引き上げられた、という話題になります。

なぜ年金額に二つのパターンが発生してしまったのか?

令和4年度の基礎年金額(月額)64,816円から令和5年度は66,250円(+1434円)に増額されました(前年度比+2.2%)。年額に換算すると777,792円→795,000円になります。なお、これは「新規裁定者」(67才以下の受給者)の金額となり「既裁定者(68歳以上の受給者)」は前年度比+1.9%となります。

なぜ「67歳以下」と「68才以上」で年金額が異なってしまったのでしょうか?厚生労働省のホームページには次のように記載されています。

”年金額の改定は、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回る場合、新規裁定者(67 歳
以下の方)の年金額は名目手取り賃金変動率を、既裁定者(68 歳以上の方)の年金額は物
価変動率を用いて改定することが法律で定められています。
このため、令和5年度の年金額は、新規裁定者は名目手取り賃金変動率(2.8%)を、既裁定
者は物価変動率(2.5%)を用いて改定します。
また、令和5年度のマクロ経済スライドによる調整(▲0.3%)と、令和3年度・令和
4年度のマクロ経済スライドの未調整分による調整(▲0.3%)が行われます。
よって、令和5年度の年金額の改定率は、新規裁定者は2.2%、既裁定者は1.9%となります”

67才以下と68才以上では年金額改定の基準となるデータが異なっている、というわけですね。なので年金額に違いが出てしまったわけです。

またここでは「マクロ経済スライド」という言葉が出てきます。これって何?

「マクロ経済スライド」って何?

この言葉も以下のように厚生労働省のHPに説明があります。

”マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。”(厚生労働省HPより引用)

平成16年に改正する前の制度では、将来の保険料の見通しを示した上で、給付水準と当面の保険料負担を見直し、それを法律で決めていました。しかし、少子高齢化が急速に進む中で、財政再計算を行う度に、最終的な保険料水準の見通しは上がり続け、将来の保険料負担がどこまで上昇するのかという懸念もありました。

そこで、平成16年の制度改正では、将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように、保険料水準がどこまで上昇するのか、また、そこに到達するまでの毎年度の保険料水準を法律で決めました。また、国が負担する割合も引き上げるとともに、積立金を活用していくことになり、公的年金財政の収入を決めました。

そして、この収入の範囲内で給付を行うため、「社会全体の公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです。この仕組みを「マクロ経済スライド」と呼んでいます。”(厚生労働省HPより引用)

つまりかいつまんで言うと

  • 現役世代と給付世代の間に不公平が起きないようにマクロでみた給付と負担の変動に応じ、積立金や税金を使いながら給付水準を自動的に調整しますよ

という事になります。

ちなみに「マクロ経済スライド」の発動は1回目は2015年度、そして、2回目、3回目は2019年度、2020年度となっており今回2023年度で4回目の発動となっています。

「年金は何歳から受け取れば一番トク?」「何歳まで受け取れば元がとれるのか?」という議論に意味はあるのか?年金の本質を理解すれば答えが見えてくる

年金って積立貯蓄じゃないの?

最近、「年金は何歳から受け取るのが一番トクなのか?」「何歳まで生きれば元が取れるのか?」といった記事をよく見かけます。私はこういった「議論」には基本的に意味がない、と考えています。

こういった「議論」が出てくる背景には、年金(公的年金)の本質に対する「誤解」があるような気がしてなりません。

皆さんが支払っているのは「国民年金保険料」、つまり「年金」は保険なのです。ですが実際には「年金」を「積立貯蓄」と思っている方が意外と多いのです。そのために「損か得か」といった議論が出てきてしまうのです。

ではそもそも「保険」ってなんでしょう?

”病気やケガ、死亡、事故などの不測の出来事、火災、台風や地震などの自然災害、第三者への損害賠償責任の負担や事業で被る不利益など、リスクをあげればきりがありません。

しかし、このようなリスクに個人の力だけで対処するのは困難なことも少なくありません。そこで、同じように不安を感じている人々から一定の保険料を集めて、万が一の事態に備えようとするのが保険です。そして、被害に遭ってしまった場合は、その集まった資金の中から保険金を受け取ることができる制度なのです。

このような、「万人は一人のために、一人は万人のために」という相互扶助のシステムのもとで人々のリスクを軽減すること。これが保険制度のあらましであり、社会的な役割なのです”(引用:東京海上日動WEBサイト)

国民年金保険は「長生きリスク」に備えるための「保険」

では「国民年金保険」は何のリスクに備える保険なのでしょうか?それは「予想外の長生きリスクに備える保険」なのです。

自分が何歳まで生きることが出来るかは誰にもわかりません。90歳まで生きるだろうと予想して90歳までの生活費を確保していても、もし95歳まで生きてしまったら衣食住に困る状況に陥るかもしれません。長生きは幸せなことでもあると同時に「リスク」でもあるのです。

こういったリスクに対処するために生きていくために必要最小限な資金を死ぬまで国が補償してくれる仕組みが「年金」なのです。「年金」があることで長生きすることによる「不安」を解消してくれているわけです。つまり保険料の支払いと引き換えに「安心感」を得られるわけですね。

がん保険に入って、毎月保険料を払い込んでいる人が、がんに罹らなかったから「損した」とは考えないですよね。自動車損害保険に入って結局一度も事故を起こさなくても「損した」と文句を言う人はいないと思います。つまり保険に入っている人々は保険料でリスクに対する「安心感」を買っているかなのです。

「年金」も「保険」なのですから、65才からの受給開始で70才で亡くなってしまっても「損した」と考えるのはちょっと違う気がします。「年金保険料」を払うことで「これで何歳まで生きても大丈夫だ」という安心を手に入れた、と考えるべきではないでしょうか?

年金は「積立貯蓄」ではない

先にも述べましたが「損だトクだ」という議論が出てくる背景には「年金が保険であること」があまり理解されていないことが一番大きな要因だと思われます。こういう考えをお持ちの方は年金が「積立貯蓄である」と誤解されているのだと思います。

自分が支払った年金保険料は国が預かり積み立てて、それを将来自分が受け取るのだ、と考えている方は意外と多いようですが、これは間違いです。年金の運用は「賦課方式」という形がとられています。現在自分が支払っている「年金保険料」は現在の年金受給者の財源となっています。つまり日本の年金制度は現役世代から年金世代への「仕送り方式」であるといえます。自分が年金をもらう側になったときはその財源は自分が支払った保険料ではなく、その時現役世代が支払っている保険料が充てられるわけです。

年金受給者のなかには数年しか年金を受け取れない人、全く受け取れない人(つまり長生きできなかった人)も当然いるわけです。そういった方々に支払われるはずだった「年金」は思いがけず長生きした人の年金の財源となるわけです。

まさしく年金は「共助」の仕組みによって運営されているのです。

年金が保険であることをご理解いただけたでしょうか?長生きのリスクに備えるため年金保険料は確実に払い込みをしていきましょう!それは自分の為でもあるし社会の為でもあるのです。

年金の事、セカンドライフのお金の事・・・もやもやをお持ちの方はお気軽に下記よりお知らせください。あなたのもやもやを伺うことがほかの同じ悩みを持つ方々へのアドバイスのもとになります。ご質問、ご意見をお待ちしております。

国民年金保険料が「スマホ決済」で支払が可能になりました

年金保険料がスマホで支払可能に

日本年金機構のホームページによると、2023年2月20日から国民年金の保険料の支払いが「スマホ決済」でも可能になったようです。対応するスマホ決済は以下の通り

  • aupay
  • d払い
  • payB
  • paypay

年金保険料納付書にあるバーコードをスマホ決済アプリで読み取ることによって、決済が可能になるそうです。今までは銀行・コンビニ等に出向いて支払っていたものが、自宅で居ながらにできるようになったのは便利ですね。

令和3年の国民年金保険料の納付率は78%です。スマホ決済の導入により納付率に変化が起きるのか、注目されます。

「年金はあてにならないから、年金保険料は払わない」という人はとーっても損をしている、って知ってた?

年金は現役世代から年金世代への「仕送り」

今の現役世代の人の中で「年金は将来もらえなくなるかもしれないから保険料は払わない」と公言する人々が一定数存在しているようです。

本当に日本の年金は将来破綻してしまうのでしょうか?

答えは「NO」です。

確かに受給額が減ったり、受給開始年齢が引き上げられることは予測されますが、年金が「なくなる」ことはありません。

それはなぜか?そこには年金の仕組みに対する世間一般の「誤解」があるからにほかなりません。

今あなたが支払っている「年金保険料」はあなたが受け取るのではなく、今現在、年金を受給している世代の年金財源となります。つまり現役世代のあなたは、年金受給者世代に対して「仕送り」をしているのです。これを「賦課方式」と呼びます。

次にあなたが年金を受け取る側になったとき、その年金の財源はあなたが現役世代の時に支払ってきた「保険料」ではなく、あなたより若いその時の現役世代が支払った「保険料」を仕送りとして受け取っているようなイメージになるのです。

つまり日本に労働生産人口が一定数存在している限り、年金が「無くなる」ことは無い、と言えます。

この「仕送り」を受け取るためには、自分も現役時代に「保険料」を支払っておく必要がありますが、実は「保険料」を支払っていない人もいつのまにか自分でも意識しないうちに「保険料」を支払っています。

これは実は「国民年金保険(国民基礎年金)」の財源の約半分は、皆さんが支払っている「税金」で賄われているからなのです。

つまり「年金保険料を払わない」人は、自分の支払った税金の中から、実際は保険料の一部を支払っているにも関わらず、自分は年金を受け取ることが出来ないのです。払うだけ払ってなにも受け取れない・・・なんだかとっても損してる、と思いませんか?

年金は「長生きリスク」に備える、国が運営するお得な「総合保険」

年金は「積立貯蓄」ではなく「保険」です。これも誤解している方が多いポイントです。

「保険」ってそもそもなんでしょう?様々なリスクに備えるために掛け金を払い「安心」を手に入れる商品ですよね。「生命保険」は早くに亡くなってしまうリスクに備え「医療保険」は病気やケガによる治療費、入院費用のリスクに備え、「自動車保険」は交通事故を起こすリスクに備える保険です。

では「年金」は何のリスクに対応できるのでしょうか?それは「長生きリスク」です。

自分は85才くらいまでしか生きられないだろうと考え、85歳までの生活に困らないだけの貯蓄を持っていたとします。ところが想定外に長生きしてしまい、生活費が底をついてしまった・・・これが「長生きリスク」です。

でも「年金」保険料を払っておけば、生きている限り一定の金額を受け取ることができ、最低限の生活は保障されます。こんな「リスク」に対応できる保険は民間の保険には存在しません。「公的年金」しかないのです。

また、「長生きリスク」だけではなく、けがや病気で働けなくなった場合は「障害年金」が支給され、一家の大黒柱が亡くなった場合は残された家族に「遺族年金」が支給されます。つまり「医療保険」や「生命保険」の機能も合わせ持っている大変お得な「保険」であるといえます。

以上の事からも年金保険料は払ったほうが断然メリットが大きい、と考えますが・・いかがでしょうか?

結局年金はいつから受け取るのが一番得なの?受給時期の判断の目安になる「プラス12年の法則」

年金は「繰り上げ」ても「繰り下げ」ても受け取れる

現在日本の年金制度は60才~75才の間で自分で自由に年金の受給開始時期を決めることが出来ます。

所謂「標準」の受給開始時期は65才になったとき。これよりも早く受け取る場合が「繰り上げ受給」、遅く受け取る場合が「繰り下げ受給」となります。

「繰り上げ」を選択すると1か月繰り上げる毎に0.4%年金は減額され、60才から受給開始した場合0.4x60か月=24%の減額となり、これが一生続きます。

「繰り下げ」を選択した場合は1か月繰り下げる毎に0.7%年金は増額され、70才から受給した場合は0.7%x60か月=42%の増額となり、75歳まで繰り下げた場合は0.7%x120か月=84%の増額になるのです。

そこで気になってくるのが繰り下げた場合の「損益分岐点」。例えば68才受給開始にした場合、受給額は0.7%x36か月=25.2%増えた金額を一生受け取れますが、65才から受け取っていた場合の3年分の年金は受け取れていません。何歳まで生きれば元がとれるのでしょうか?

「プラス12年の法則」とは?

社会保険労務士の増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』の中で増田氏は「プラス12年の法則」を提唱しています。

その「法則」とは、年金の受給時期を65才以降に繰り下げた場合、「受取開始年齢に12年足した年齢になったとき」に「65才から受給した場合の年金総額に追いつく」といったものです。

つまり、69歳まで年金受給開始を繰り下げた場合、69+12=81才の時に生存していれば、65才から受給した場合と同じ年金総額になったという事になります。この後は生きている間は繰り下げで増額した年金を一生受け取れるわけですから、繰り下げて「トクをした」という事になるわけです。(税金・社会保険料は勘案せず)

ただし、70才以降75才まで繰り下げた場合は、税金・社会保険料(年金にもかかります!)が高くなるため「手取り額」が減り、「プラス12年」では追いつけなくなるケースも出てきます

「平均寿命」ではなく「平均余命」を基準にしよう

そもそも自分が実際何歳まで生きるのかが分かれば、いろいろ考える必要もないわけですが・・・

わからないにしろ、何らかの「基準」があったほうがいいですよね。

我々FPや保険業界で利用する基準は「平均余命」です。「平均寿命」ではありません。

平均寿命というのは「今年生まれた0才の子供が将来何歳まで生きるか」という数字になります。

これに対して「平均余命」は「現在の年齢からあと何年生きれるのか」という統計データになります。

厚生労働省HPより引用

現在65才の男性は平均的には85才まで生きる可能性が高い、と判断できます。70歳まで年金受給を繰り下げた場合の年金繰り上げの「損益分岐点」は70+12=82才となりますので、繰り下げてメリットを得る確率は高い、と言えます。

まあ、これはあくまで確率上のお話です。もちろん自分が何歳まで生きるかなんて誰にもわかりません。あくまでも一つの「目安」としてお考え下さい。

興味のある方は増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』をお読みになってはいかがでしょうか。

令和4年10月から短時間労働者(パート・アルバイト)に対する健康保険・厚生年金保険の適用条件が拡大!パート主婦やアルバイト就業者は要チェック!

パートやアルバイトで生計を立てていて今まで厚生年金保険加入の対象になっていなかった方々に朗報です。今年10月から下記の様に条件が緩和されるため年金に加入できる人が大幅に増えると思われます。

改正される加入要件

「特定適用事業所」の要件

(変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所

        ↓             (変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所

「短時間労働者」の適用要件

(変更前)雇用期間が1年以上見込まれること       ↓

(変更後)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)

「労働時間」の適用要件

週の所定労働時間が20時間以上(変更無し)

「賃金」の適用要件月額88,000円以上(変更無し)

尚、特定適用事業所の要件は令和6年10月には「被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人を超える事業所」にまで緩和されます。該当する方は是非勤務先に確認していただきたいと思います。基本的に手続きは全て雇用者(会社)が行いますので従業員は何もする必要はありません。給与明細で確認しましょうね!