定年後

退職金が振り込まれました。

今日で定年退職から約ひと月。

ついに老後資金の柱、「退職金」が無事振り込まれました。

通帳に記帳すると、改めて「定年になったんだなあ・・・」と実感。

退職所得は「源泉分離課税」!

皆さん、退職金は「退職所得」という区分で、「給与所得」とは別の扱いになっていることはご存じですか?

まず「退職所得控除」という控除枠があって、40万円x20年+(在職年数-20年)x70万円までは税金がかかりません。私の場合在職37年でしたから・・・40万円x20年+(37-20)x70万円=1990万円 までは手取り100%となるわけです。

え、いくらもらったのかって?言える訳ない(笑)1990万には遠く及ばない金額、とだけ言っておこう。つまり、1990万円に達していないため、税金は一銭も引かれず振り込まれておりました。

なお退職所得は「源泉分離課税」です。前もって「退職所得の受給に関する申告」書を提出することにより、給与所得とは別に源泉徴収を行い、それで課税が終了します。

この書類の提出を怠ると、退職金の収入金額から20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されてしまいます。取り戻すためには確定申告が必要になります。

退職金は税制的に優遇されている

このように退職金はその受取の事由からかなり税制的に優遇されています。たとえ受取額が「退職金控除額」を超えてしまった場合でも課税対象額は超えた分の1/2です。つまり私が3000万円の退職金を受け取ったとしても3000円-1990万=1010万円に対して課税されるのではなく、1010万円x1/2=505万円に対しての課税となります。

ただ、この退職控除はどうやら見直される事になりそうな状況です。「40万x20年+(在職年数-20年)x70万」から「40万x在職年数」への制度変更を政府は検討している模様です。はてさて、どうなりますことやら・・・

定年退職となりました。継続雇用で引き続き働いてはいますが、自分自身のライフプランシュミレーション作成し、今後のより理想的な働き方を模索中です。

アルバイトで小さく稼ぐ

こんにちは。

5月23日をもちまして、勤めていた会社を定年退職致しました。

といってもそのまま継続雇用で働くので、現在も何も環境は変わっておりません。同じ席で同じ仕事に従事しています。変わるのは「給与」と「呼び名」のみ・・・

身分的には「マスター社員」という呼び名に変わります。

1年ごとの契約更新などといった「有期契約」ではなく、希望すれば65歳までは働くことができます。この点はありがたいですね。

基本給は定年退職前から約4割減、です・・・・

職場の上司(年下)には、給料が4割減って責任も業務量も同じっていうのは、ちょっと納得できないよね?という話をしました。「そりゃそうですよね」と彼も同意。

というわけでマスター社員になったら「責任者からは外してもらう」「基本的には対外的に表に出ることは極力しない」「現スタッフのフォロー的立場での仕事をメインとする」ということで一応の合意をみております。当然残業も減るでしょうから、その分FPとしての仕事に時間を費やすつもりです。

ただ組織の常として、こういった「合意」はなかなか守られません。そもそも人が足りてはいないので、いざ始まれば結局昨年までやっていた仕事をズルズルとまたやることになるのではないのかなと少し危惧しています。

あと1年やってみて、当初の「合意」が守られないようであれば、仕事を変えることも視野にいれなければならないかな、と考えており、その場合どんな職がありそうか今からリサーチをしているところです。

60歳になった今、子供は二人とも独立し、家のローンもありません。夫婦二人で生活できれば十分です。

というわけで自分自身のライフプランシュミレーションを作ってみました。

その結果、61歳~65歳まで月15万円、66歳~70歳まで月5万円の収入を確保すれば、資産(退職金と預金の合計)は90歳時点でもまだ十分に残っている、という結果になりました。

月15万の収入であれば正社員にこだわる必要もなさそうです。時給1300円のアルバイトで働けば、約115時間で達成可能です。一日8時間働くとすると、14.3日分となります。週3日~4日労働で十分達成できそうです。

アルバイトであれば60代でも採用してくれるところは、どうやらありそうな感じです。私は運転が好きなので「高齢者施設利用者の送迎ドライバー」や「レンタカーの回送ドライバー」あたりを狙っています(笑)

こうしてシュミレーションをすると、今まで漠然と抱えていた「不安」が、クリアーになります。沢山のお金を稼ぐ必要は薄れ、「小さく長く」収入を得続けることが重要になってくるのです。

ちなみに私の退職金は、サービス業に従事する4大卒の社員の平均値を10%ほど下回っています。65歳から支給される年金も夫婦で月20万です。そんな私でも70歳まで「小さく長く」働き続けることで、このような比較的余裕のある見通しを持つことができるわけです。

老後に生活に「不安」を持つのはそれが「漠然」とした不安だからなのではないか、と思います。今の資産状況、これからの収入、年金受給額、支出予定等々を明確にしシュミレーションを行うことで、自分の将来が「見える化」され、足りている部分、改善しなければいけない部分が明らかになり、より自分の未来に対して前向きになれると思います。

自分の老後の生活に不安をお持ちの方は、ぜひ一度FPに相談してみてはいかがでしょうか?

雇用保険法等の一部改正案の概要が厚生労働省より発表されました(雇用保険の適用要件の拡大・リスキリング支援)。主な改正点をお知らせします

リスキリングする定年近くのサラリーマン

雇用保険の一部改正が行われるようです。厚生労働省より発表がありました。概要は以下の通りです。

雇用保険の適用拡大

雇用保険の被保険者の適用要件はこれまで、週の労働時間が「20時間以上」とされていましたが、この改正により「週10時間以上」に変わります。適用対象が広がりますね。なお、施行は令和10年10月1日です

教育訓練やリスキリング支援

①自己都合退職者は基本手当の給付に関し、現在2カ月間の給付制限期間がありますが、この改正により「雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合」には給付制限期間がなくなります。早期に給付が受けられるようになりますね。

また現在自己都合対象の場合の給付制限期間は2カ月ですが、これが1カ月に短縮されます。いずれも令和7年4月1日の施行です

②「教育訓練給付金」について現在の給付率70%が80%に引き上げられます。資格試験の通信講座等、対象の教育訓練の費用負担が減ることになります。令和6年10月1日からの施行となります。

③雇用保険の被保険者が、在職中に教育訓練のために休暇を取得した場合、新たな給付金が支給されます。これは今までなかった制度です。令和7年10月1日からの施行となります。

スキルアップのための勉強等を考えている方には、朗報ですね。

国としてもリスキリングを進めたい、という施策の表れかと思われます。

まだ概要の発表ですので、第二方があればまたお伝えしたいと思います。

定年前後の会社員が知っておくべきこと ~その1~退職金

定年後

あなたは自分の退職金がいくらか知っていますか?

老後資金の大事な財源のひとつである退職金。                         会社員の皆さん、あなたは自分の退職金がいくらなのか知っていますか?

第一生命経済研究所「退職金制度に関する意識調査」によると、「退職金を自分で計算したことがある」という人は、全世代では全体の17.3%、50代では30%しかいないんだそうです。      50代会社員の全体の70%が自分の退職金額を正確に把握していない、ということになります。

自分の退職金が正確に把握できないと、退職後のライフプランのシュミレーションを作ることができません。そうなると老後破産しないためには、60歳でリタイアしても大丈夫なのか、65歳まで働く必要があるのか、はたまた70歳まで働かないとキツいのか、正社員で働くべきなのか、アルバイトで緩く働くでも大丈夫なのか等々の判断をすることができないのです。

自分の退職金額を把握しましょう!

「自分の退職金額がわからない」という場合にはどうすればいいのでしょうか?
①総務部に確認!                                  総務部に「私、退職金いくらもらえるのかな?」と聞いてみましょう。すぐに教えてくれるはずです。
②自分で計算!                                        退職金の計算は意外とかんたんです。
計算方法・・退職金基礎給x支給率+特別加算or減算=退職金額
   退職金基礎給→年に一度「賃金辞令」等で確認できます
   支給月数→勤続年数によって変わります。通常「就業規則」に記載されています。

「退職金」の意味と使い道

「退職金」って長年働いたことに対する「ご褒美」なのでしょうか? いいえ、そうではありません。退職金は後払いされる「給与」なのです。ではそんな退職金の使い道は、どう考えればいいのでしょうか?

旅行の資金                                          子や孫への援助資金                                     住宅ローンの残債を完済
資産運用

等々・・・まあ、いろいろありますよね。

でも、退職金の一番大事な使い道は老後を生きるための資金なんですよね。

千万単位のお金が振り込まれ、気が大きくなって「世界一周クルーズ」に出かけたり、孫や子に大判振る舞いしてしまったり、経験のない資産運用に大きな金額を投じてしまったり・・・というお金の使い方をする前に一度このことを思い出してください。

「老後資金としての退職金」と「ライフイベントの資金としての退職金」を仕分けして、退職金の使い方を考えてみてください。

  

同じ会社に60才以降も継続雇用される場合、利用可能な社会保険の「60才以上の特例」って知っていますか?

社会保険の60歳以上の特例

定年後、同じ会社に継続して再雇用される場合、健康保険が定年前の保険資格が自動的に継続されます。特に手続きは不要で、健康保険証もそのまま使用できます。
何もすることは無く、大変ラクなのですが、ひとつ注意すべき点があります。
それは「給与が下がっても保険料はそのまま」ということです。
なお、標準報酬月額が2等級以上下がった場合は下がってから4か月後に保険料が見直されます。ただ保険料は「後払い」のため、実際に下がった保険料が適用されるのは4か月+1か月=5か月後となるのです。

継続雇用後の給与は現役時代の平均70%程度、と言われており、多くの人が「2等級以上」下がることになると考えられます。3割も収入が落ちるのに4か月間は現役並みの保険料を支払わねばならないのは、結構きついですよね・・・

ここで「60歳以上の特例」の登場です。
この特例は60歳以降継続雇用で働く場合、現在の保険資格を「継続」するのではなく、「新たに保険資格を取りなおすことが出来る」というものです。
資格の切り替えは誕生日を境に行われるため、誕生日の前日までが「古い保険証」、誕生日から「新しい保険証」に切り替わります。
保険資格の喪失と取得を同じ日に行うため「同日得喪」と呼ばれているものです。
誕生日から保険資格が切り替わるため、継続雇用後給与が1等級でも下がった場合、すぐに保険料が下がることになります。

ただデメリットもあります。
一つは新しい保険証が届くまで1~2週間かかること。この間病院に罹る場合はいったん全額負担となり、保険証到着後7割が払い戻しという形になります。
もう一つは扶養家族がいる場合、再度扶養申請を行う必要があることです。
給与が下がるため、扶養家族の収入によっては扶養が認められない可能性があります。
ご自身や家族の状況を確認し、判断する必要がありますね。

あなたは退職金がいくらもらえるか知っていますか?正確な金額を把握することがとても重要

突然ですが、あなたは自分の退職金がいくらなのか知っていますか?

フィデリティ退職・投資教育研究所作成の「高齢者の金融リテラシー調査2019」によると、「退職金額は7割の人が会社からの通知で知り、その半数近くが退職直前に知った」との調査結果が出ています。

退職時の自分の「資産額」を正確に把握することは、60代以降のライフプランを考えていく上でとても重要です。60歳時点で自分がいくら資産(現預金)を持っているのか分からなければ、ライフプランシュミレーションの作りようがありません。「お金の見える化」が実現できないことになります。

自分の退職金を正確に知ろう!

「退職金がいくらもらえるのかわからない」とういう皆さん、まずは自分で調べてましょう!調べる方法は以下の通りです。

1、総務部に聞く!

まあ、当たり前っちゃあ当たり前なんですが・・・これができてないから70%の人が自分の退職金額を知らないわけです。「僕の退職金はいくらですか?、なんて聞きづらいよなあ」なんてみなさん思ってるんでしょうか・・・

退職金は「報奨金」ではありません!「給与の後払い」です!ですから堂々と聞いてもらって何ら問題はありません。

2、自分で計算する

これも以外と簡単です。

退職金の計算方法は会社によって若干の違いはあるかもしれませんが、概ね下記のようなモノです

【退職金基礎給x支給率+特別加算or減算=退職金額】

   ※退職金基礎給→年に一度「賃金辞令」等で確認できる

   ※支給月数→勤続年数によって変わる。通常「就業規則」に記載されている 

私もこの方法で自分の退職金を計算しました。今は社内のイントラネットに就業規則等を閲覧できる企業も多くなっていると思いますので、この方法なら誰にも尋ねることなく調べることができます。

退職金額を知ることが「リタイアメントプランニング(老後の生活設計)」を考える第一歩になります。ぜひやってみてください。

        

60才以降もサラリーマンとして働くと年金はいくら増えるのか?「180万円の法則」でカンタンに分かる!

私事ですが、60才の定年まで1年を切りました。

先日会社の総務部から「あと1年で定年だけど、そのあとどうする?」と継続雇用の意思の確認調査も送られて来ました。

FPとして活動を始める以前は、漠然と「もうサラリーマンはいいや。子供も独立したし、家のローンもないし、アルバイトで週3回くらい働くかんじでいいかなあ」なんて思っていたのですが、FPとして様々なお金に関する知識を得ることが出来ている今は少し考え方が変わっています。

自分自身のライフプランシュミレーションを作成したところ、65歳まで継続雇用で月収20万程度で働くと、66才以降のキャッシュフローがとてもラクになることが分かってきました。

定年後の過ごし方を決めかねている方は、是非FPにご相談されることをお勧めいたします。自分のライフプランが数字で「見える化」されることにより、より前向きに定年後を迎えることが出来ると思いますよ。

定年後の働き方には三つのパターンがある

さて本題に入ります。

定年後の働き方は大きく分けて3パターンです。

一つ目が今働いている会社で引き続き65歳まで雇用してもらう「再雇用」や「継続雇用」と呼ばれる働き方です。

二つ目は今働いている会社は定年で退職し、新たに別会社で働く「再就職」ですね。

三つめは定年後は組織から離れ、自分で個人事業主になったりや法人を設立して働く「起業」があります。

ここでは一番目、二番目の働き方をした場合の年金についてお話をしたいと思います。

年金を増やすには60才以降も「社会保険」に加入することが必須

一番目、二番目の働き方に共通するのは「60才以降も引き続き社会保険料を支払う」というところです。

「国民年金」の加入資格は20才以上60才未満となるため、60才以降も加入することはできません。学生時代に「国民年金保険料を払っていない」という方は大卒で企業に就職したサラリーマンには意外と多いと思います(かくいう私もその一人です)。

国民年金を満額受け取るために必要な「加入期間480か月」に達していない人は「任意加入」という制度があり、60才で会社員を退職すれば65歳までの間に480か月に満たない部分の保険料を納付することが可能で、国民年金の受給額を満額にすることができます。ただし60才以降も社会保険に加入する場合は「任意加入」はできないことになっています。

では「社会保険」は60才以降も加入できるのでしょうか?

答えは「加入できる」です。

社会保険は70歳まで加入することが可能です。保険料を支払えばその分「厚生年金」の受給額は増えていきます。

「いくら年金が増えるのか?」は以下の計算式で算出することができます。

「標準報酬月額(額面月収)」x0.55%x勤務月数=プラスになる年金額(年額)

額面月収が20万円で60才から65才まで勤務した場合「20万x0.55%x60か月=66,000円」となり、年額で66,000円年金が増えることになります。

ただこの「0.55%」ってなかなか覚えにくいですよね?

そこでもっと簡単にいくら年金が増えるのか、把握することができる「法則」があるのです。

年収が180万円増えると1万円年金が増える!?

それが「180万円の法則」です。

180万円年収が増加すると年金は年額1万円増えるのです。

年収が240万円の場合は

(240÷180)× 10000円 ≒ 13,300円 13,300円x5年=66,500円 

と先の「公式」で計算した結果とほぼ同じになります。

「経過的加算」で国民年金の受給額も増える!?

さてここでもうひとつお話しておかなければならないことがあります。

先ほど「国民年金の任意加入」の説明で「60才以降も社会保険に加入する場合は、国民年金の任意加入はできず、国民年金を増やすことはできない」とお話ししました。

実は社会保険は、国民年金保険にあたる「定額部分」と厚生年金保険にあたる「比例報酬部分」から成っており、社会保険料を支払うことで「国民年金」と「厚生年金」を受け取ることができる仕組みになっています。

60才以降も「社会保険料」を支払うという事は「国民年金保険料」も支払っているという事になるのです。

ただし先ほども述べました通り、国民年金に60才以降加入することはできません。

たとえば、22歳〜65歳まで会社員として働いていたとします。国民年金には38年しか加入していないこととなるため、老齢基礎年金(国民年金)は38年分しか計算されません。この場合、60歳〜65歳まで厚生年金保険に加入している期間があるため、「経過的加算」として2年分の老齢基礎年金(国民年金)の金額に相当する額が、厚生年金保険から加算されることになります。あくまで「厚生年金」に加算される、というところがキモです。

ではいくら加算されるのか?ですが、国民年金の受給額の計算式は

定額部分の金額 = 1,621円 (令和4年)× 厚生年金保険加入月数(上限480月)

となります

1621円x480か月=778,080円・・・定額部分

777,800円(令和4年)x(38年x12÷480)=738,910円・・・老齢基礎年金(国民年金)

778,080円-738,910円=39,170円・・・経過的加算

上記計算式により、「経過的加算」として厚生年金に39,170円が加算されます。

先に計算した厚生年金の増加分66,000円と合わせて105,170円が65歳まで社会保険に加入することによって増える年金額という事になります

私はこの計算結果により、「65歳まで今の会社で働こう!」と決意するに至りました(笑)

やっぱり「知る」って大事ですね!

皆さんはどう思われますか?

「年金は何歳から受け取れば一番トク?」「何歳まで受け取れば元がとれるのか?」という議論に意味はあるのか?年金の本質を理解すれば答えが見えてくる

年金って積立貯蓄じゃないの?

最近、「年金は何歳から受け取るのが一番トクなのか?」「何歳まで生きれば元が取れるのか?」といった記事をよく見かけます。私はこういった「議論」には基本的に意味がない、と考えています。

こういった「議論」が出てくる背景には、年金(公的年金)の本質に対する「誤解」があるような気がしてなりません。

皆さんが支払っているのは「国民年金保険料」、つまり「年金」は保険なのです。ですが実際には「年金」を「積立貯蓄」と思っている方が意外と多いのです。そのために「損か得か」といった議論が出てきてしまうのです。

ではそもそも「保険」ってなんでしょう?

”病気やケガ、死亡、事故などの不測の出来事、火災、台風や地震などの自然災害、第三者への損害賠償責任の負担や事業で被る不利益など、リスクをあげればきりがありません。

しかし、このようなリスクに個人の力だけで対処するのは困難なことも少なくありません。そこで、同じように不安を感じている人々から一定の保険料を集めて、万が一の事態に備えようとするのが保険です。そして、被害に遭ってしまった場合は、その集まった資金の中から保険金を受け取ることができる制度なのです。

このような、「万人は一人のために、一人は万人のために」という相互扶助のシステムのもとで人々のリスクを軽減すること。これが保険制度のあらましであり、社会的な役割なのです”(引用:東京海上日動WEBサイト)

国民年金保険は「長生きリスク」に備えるための「保険」

では「国民年金保険」は何のリスクに備える保険なのでしょうか?それは「予想外の長生きリスクに備える保険」なのです。

自分が何歳まで生きることが出来るかは誰にもわかりません。90歳まで生きるだろうと予想して90歳までの生活費を確保していても、もし95歳まで生きてしまったら衣食住に困る状況に陥るかもしれません。長生きは幸せなことでもあると同時に「リスク」でもあるのです。

こういったリスクに対処するために生きていくために必要最小限な資金を死ぬまで国が補償してくれる仕組みが「年金」なのです。「年金」があることで長生きすることによる「不安」を解消してくれているわけです。つまり保険料の支払いと引き換えに「安心感」を得られるわけですね。

がん保険に入って、毎月保険料を払い込んでいる人が、がんに罹らなかったから「損した」とは考えないですよね。自動車損害保険に入って結局一度も事故を起こさなくても「損した」と文句を言う人はいないと思います。つまり保険に入っている人々は保険料でリスクに対する「安心感」を買っているかなのです。

「年金」も「保険」なのですから、65才からの受給開始で70才で亡くなってしまっても「損した」と考えるのはちょっと違う気がします。「年金保険料」を払うことで「これで何歳まで生きても大丈夫だ」という安心を手に入れた、と考えるべきではないでしょうか?

年金は「積立貯蓄」ではない

先にも述べましたが「損だトクだ」という議論が出てくる背景には「年金が保険であること」があまり理解されていないことが一番大きな要因だと思われます。こういう考えをお持ちの方は年金が「積立貯蓄である」と誤解されているのだと思います。

自分が支払った年金保険料は国が預かり積み立てて、それを将来自分が受け取るのだ、と考えている方は意外と多いようですが、これは間違いです。年金の運用は「賦課方式」という形がとられています。現在自分が支払っている「年金保険料」は現在の年金受給者の財源となっています。つまり日本の年金制度は現役世代から年金世代への「仕送り方式」であるといえます。自分が年金をもらう側になったときはその財源は自分が支払った保険料ではなく、その時現役世代が支払っている保険料が充てられるわけです。

年金受給者のなかには数年しか年金を受け取れない人、全く受け取れない人(つまり長生きできなかった人)も当然いるわけです。そういった方々に支払われるはずだった「年金」は思いがけず長生きした人の年金の財源となるわけです。

まさしく年金は「共助」の仕組みによって運営されているのです。

年金が保険であることをご理解いただけたでしょうか?長生きのリスクに備えるため年金保険料は確実に払い込みをしていきましょう!それは自分の為でもあるし社会の為でもあるのです。

年金の事、セカンドライフのお金の事・・・もやもやをお持ちの方はお気軽に下記よりお知らせください。あなたのもやもやを伺うことがほかの同じ悩みを持つ方々へのアドバイスのもとになります。ご質問、ご意見をお待ちしております。

結局年金はいつから受け取るのが一番得なの?受給時期の判断の目安になる「プラス12年の法則」

年金は「繰り上げ」ても「繰り下げ」ても受け取れる

現在日本の年金制度は60才~75才の間で自分で自由に年金の受給開始時期を決めることが出来ます。

所謂「標準」の受給開始時期は65才になったとき。これよりも早く受け取る場合が「繰り上げ受給」、遅く受け取る場合が「繰り下げ受給」となります。

「繰り上げ」を選択すると1か月繰り上げる毎に0.4%年金は減額され、60才から受給開始した場合0.4x60か月=24%の減額となり、これが一生続きます。

「繰り下げ」を選択した場合は1か月繰り下げる毎に0.7%年金は増額され、70才から受給した場合は0.7%x60か月=42%の増額となり、75歳まで繰り下げた場合は0.7%x120か月=84%の増額になるのです。

そこで気になってくるのが繰り下げた場合の「損益分岐点」。例えば68才受給開始にした場合、受給額は0.7%x36か月=25.2%増えた金額を一生受け取れますが、65才から受け取っていた場合の3年分の年金は受け取れていません。何歳まで生きれば元がとれるのでしょうか?

「プラス12年の法則」とは?

社会保険労務士の増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』の中で増田氏は「プラス12年の法則」を提唱しています。

その「法則」とは、年金の受給時期を65才以降に繰り下げた場合、「受取開始年齢に12年足した年齢になったとき」に「65才から受給した場合の年金総額に追いつく」といったものです。

つまり、69歳まで年金受給開始を繰り下げた場合、69+12=81才の時に生存していれば、65才から受給した場合と同じ年金総額になったという事になります。この後は生きている間は繰り下げで増額した年金を一生受け取れるわけですから、繰り下げて「トクをした」という事になるわけです。(税金・社会保険料は勘案せず)

ただし、70才以降75才まで繰り下げた場合は、税金・社会保険料(年金にもかかります!)が高くなるため「手取り額」が減り、「プラス12年」では追いつけなくなるケースも出てきます

「平均寿命」ではなく「平均余命」を基準にしよう

そもそも自分が実際何歳まで生きるのかが分かれば、いろいろ考える必要もないわけですが・・・

わからないにしろ、何らかの「基準」があったほうがいいですよね。

我々FPや保険業界で利用する基準は「平均余命」です。「平均寿命」ではありません。

平均寿命というのは「今年生まれた0才の子供が将来何歳まで生きるか」という数字になります。

これに対して「平均余命」は「現在の年齢からあと何年生きれるのか」という統計データになります。

厚生労働省HPより引用

現在65才の男性は平均的には85才まで生きる可能性が高い、と判断できます。70歳まで年金受給を繰り下げた場合の年金繰り上げの「損益分岐点」は70+12=82才となりますので、繰り下げてメリットを得る確率は高い、と言えます。

まあ、これはあくまで確率上のお話です。もちろん自分が何歳まで生きるかなんて誰にもわかりません。あくまでも一つの「目安」としてお考え下さい。

興味のある方は増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』をお読みになってはいかがでしょうか。

つみたて投資で元本が2倍になるまでどのくらいの運用期間が必要?「126の法則」でカンタンに把握できる

これからつみたて投資を始めてみよう、とお考えのあなた。投資元本が2倍になるのにどのくらいの期間が必要だと思いますか?簡単に知ることのできる「法則」があります。それが「126の法則」です。

この法則は慶応大学理工学部教授の 枇々木 規雄氏が「積立投資の複利効果を概算する簡単な計算ルール」というレポートの中で提唱された法則になります。

この「126の法則」は、積立投資や積立預金を行った場合に「積立年数x利率(%)=126」という数式で資産が積立元本の2倍になるまでの積立年数や運用利率を求めることが出来る、というものです。

つまり「年数」を求めたい場合は「126÷利率」という数式で、「運用利率」を求めたい場合は「126÷積立年数」という数式で簡単に求めることができる、という公式になります。

分かり易くするために表にしてみました。

【積立元本が2倍になる「126の法則」の使い方】枇々木 規雄「積立投資の複利効果を概算する簡単な計算ルール」より出典

運用利率が3%の場合、元本が2倍になるのは42年後、という意味になります。

毎月2万円ずつの積立を20才から始めた場合、3%の利率で運用すると62歳の時、資産は「2万x12か月x20年=480万円」の元本が2倍の「960万円」になる計算ですね。

この「法則」は下記のようなものもあります。

  • 積立投資の元本が1.5倍になる「76の法則」
  • 積立投資の元本が1.5倍になる「190の法則」

それぞれ上記の表の「126」を「76」や「190」に入れ替えて計算することで、それぞれの運用利率や運用年数を知ることが出来ます。

ここでは詳細は割愛しますが「早見表」をつかって様々な倍率の「法則」を導き出すことが可能です。

セカンドライフの資産運用の見通しを判断するために、是非覚えておいてください。