通常「退職金」とは会社を退職するときに支払われる一時金の事を指し、給与の後払いの性質を持っています。
ところが、会社を退職する前にある一定の事情により「退職金相当額」が支払われる事になった場合、これを「退職所得」として扱っても良いのでしょうか?
「ある一定の事情」とは次のようなケースです。
・当初定年の年齢は60歳だったが、定年年齢の引き上げが行われた。
・従業員側は60歳で退職金を受け取る事を前提にライフプランを立てていた。
・そこで引き上げ後の定年前に退職金を前倒しで支給した。
ある一定の条件を満たせば「退職所得」として認められる
結論として、下記の条件を満たせば退職所得として取り扱って良いとの通達が国税庁より示されました。
●60歳以降の勤務は、退職金の算定に影響しない(60歳で受け取っても65歳で受け取っても退職金は同額)
●退職金相当額を受け取った後は、退職時に一時金は支払われない
●定年引き上げの実施が該当社員の入社後に行われた
●会社の規定により「退職金」の受け取り時期は、退職時か60歳かの何れかのみ選択可能。従業員が任意の受給時期を指定できない。
定年引き上げによる想定外の不利益を被る従業員が発生する事となるため、その不利益を会社として解消すべく行う取り組みであることも認められた理由の一つ
※国税庁サイト
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/04.htm
退職所得か否かで税金や社会保険料が大きく変わる
もし退職所得と認められなかった場合は「給与所得」となります。
退職所得は税金についてかなり優遇されている(20年以上勤続の場合、非課税枠=40万円x20年+(退職時の勤続年数ー20年)x70万)ので給与所得と認定されると高い税率での納税と高額の社会保険料の支払いが必要になります。
働き方と収入が多様化する現代には欠かせない知識であると言えそうです。