年金は「繰り上げ」ても「繰り下げ」ても受け取れる
現在日本の年金制度は60才~75才の間で自分で自由に年金の受給開始時期を決めることが出来ます。
所謂「標準」の受給開始時期は65才になったとき。これよりも早く受け取る場合が「繰り上げ受給」、遅く受け取る場合が「繰り下げ受給」となります。
「繰り上げ」を選択すると1か月繰り上げる毎に0.4%年金は減額され、60才から受給開始した場合0.4x60か月=24%の減額となり、これが一生続きます。
「繰り下げ」を選択した場合は1か月繰り下げる毎に0.7%年金は増額され、70才から受給した場合は0.7%x60か月=42%の増額となり、75歳まで繰り下げた場合は0.7%x120か月=84%の増額になるのです。
そこで気になってくるのが繰り下げた場合の「損益分岐点」。例えば68才受給開始にした場合、受給額は0.7%x36か月=25.2%増えた金額を一生受け取れますが、65才から受け取っていた場合の3年分の年金は受け取れていません。何歳まで生きれば元がとれるのでしょうか?
「プラス12年の法則」とは?
社会保険労務士の増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』の中で増田氏は「プラス12年の法則」を提唱しています。
その「法則」とは、年金の受給時期を65才以降に繰り下げた場合、「受取開始年齢に12年足した年齢になったとき」に「65才から受給した場合の年金総額に追いつく」といったものです。
つまり、69歳まで年金受給開始を繰り下げた場合、69+12=81才の時に生存していれば、65才から受給した場合と同じ年金総額になったという事になります。この後は生きている間は繰り下げで増額した年金を一生受け取れるわけですから、繰り下げて「トクをした」という事になるわけです。(税金・社会保険料は勘案せず)
ただし、70才以降75才まで繰り下げた場合は、税金・社会保険料(年金にもかかります!)が高くなるため「手取り額」が減り、「プラス12年」では追いつけなくなるケースも出てきます
「平均寿命」ではなく「平均余命」を基準にしよう
そもそも自分が実際何歳まで生きるのかが分かれば、いろいろ考える必要もないわけですが・・・
わからないにしろ、何らかの「基準」があったほうがいいですよね。
我々FPや保険業界で利用する基準は「平均余命」です。「平均寿命」ではありません。
平均寿命というのは「今年生まれた0才の子供が将来何歳まで生きるか」という数字になります。
これに対して「平均余命」は「現在の年齢からあと何年生きれるのか」という統計データになります。
現在65才の男性は平均的には85才まで生きる可能性が高い、と判断できます。70歳まで年金受給を繰り下げた場合の年金繰り上げの「損益分岐点」は70+12=82才となりますので、繰り下げてメリットを得る確率は高い、と言えます。
まあ、これはあくまで確率上のお話です。もちろん自分が何歳まで生きるかなんて誰にもわかりません。あくまでも一つの「目安」としてお考え下さい。
興味のある方は増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』をお読みになってはいかがでしょうか。