定年退職を迎え、これからのセカンドライフを描くとともに、ご自身の財産や将来の相続について考え始める方も多いのではないでしょうか。相続の準備を進める際、よくある落とし穴の一つが「相続人の数え方」です。
実は、遺産を分けるための「民法」と、税金を計算するための「相続税法」では、ルールの違いから「相続人の人数が変わる」ことがあります。今回は、定年前後にぜひ整理しておきたい、2つの法律における相続人の数え方の違いについて解説します。
民法上の「法定相続人」(遺産を分ける基準)
民法は、残されたご家族の生活保障や感情を重視し、「誰が遺産を受け取る権利を持つか」を定めています。
配偶者は常に相続人となり、それ以外は第1順位(子)、第2順位(親)、第3順位(兄弟姉妹)と優先順位が決まっています。
ここで覚えておきたいのは、以下の2点です。
- 養子: 人数に制限はなく、実子と全く同じ権利を持ちます。
- 相続放棄: 放棄をした人は「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。
税法上の「法定相続人」(税金計算の基準)
一方、税法での法定相続人の数は、相続税がかかるかどうかを決める「基礎控除額」を計算するための重要な基準となります。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
この計算において、民法と税法で扱いが大きく異なるケースが2つあります。
違い①:「養子」の数え方
民法では何人でも相続人になれますが、税法では基礎控除の計算に含められる養子の数に厳しい制限があります。
- 実子がいる場合: 1人まで
- 実子がいない場合: 2人まで
これは、過度な養子縁組による意図的な節税を防ぐためのルールです。お孫さんを養子に迎えているようなケースでは特に注意が必要です。
違い②:「相続放棄」の扱い
相続放棄をした人が出た場合も扱いが変わります。
民法では、放棄した人は人数から除外されますが、税法では「相続放棄はなかったもの」として、そのまま人数にカウントして基礎控除の計算を行います。これも、放棄によって意図的に基礎控除額を引き上げるのを防ぐための仕組みです。
まとめ
遺産の分け方(話し合い)では「民法」、相続税の計算では「税法」。
この2つのルールが混ざってしまうと、「うちは非課税だと思っていたのに、実は申告が必要だった」という事態になりかねません。
大切なご家族が将来困らないよう、まずはご自身の状況に当てはめて、2つの基準で「相続人の数」を書き出してみることから始めてみませんか?早めの現状把握が、安心できる老後と円満な相続に繋がります。


